当たり前ですが、商売上、在庫はとても重要です。 お客様がせっかく購入しようとしてくれているのに、在庫がなければ売ることができず、それだけ売上と利益を儲けそこないますし(これを機会損失といいます)、あそこは品揃えが悪いということで次の注文は別の会社にしようと思われてしまうかもしれません。
こうしたことから、ついつい、多めの在庫を発注してしまうというのは経営者(もしくは購買担当者)の自然な行動かもしれません。
それが売れ筋商品の場合であれば、売れるつど仕入れ、また売ってと良い循環になります。しかし、売れ行きの良くない商品や、かつては売れ筋でも今は売れ筋ではなくなってしまった商品などは、いつの間にか在庫が溜まり、過剰在庫・滞留在庫となっている場合もあるのではないでしょうか。
つい忘れがちですが、言うまでもなく、在庫は会社のお金が変化したものです(お金を払って購入しています)。しかも在庫の間、つまり商品が売れるまではお金として戻ってきません。つまり、在庫のままでは会社の貴重なお金が、寝ている状態なのです。
会社経営の重要なポイントの一つに、会社のお金がグルグルと回っていることがあります。会社のお金がグルグルと回っているというのは、仕入れて売ってまた仕入れてという循環が、スピーディに効率よく回っている状態をいいます。こうした状態の時は、銀行からあまりお金を借りなくても事業がうまく回ります。
一方、お金のめぐりがよくないと、仕入れて売ってまた仕入れてという循環の途中でお金が不足してきて、銀行からお金を借りないといけなくなったりします。このお金のめぐりを悪くする大きな原因の一つが、過剰在庫・滞留在庫なのです。
では、どのくらいの在庫が残っていると、過剰在庫・滞留在庫の疑いが出てくるのでしょうか。 これを判断するのには、一般的には、在庫回転期間という指標でみてみます。在庫回転期間は、在庫(原材料+商品+製品+半製品+仕掛品)÷平均月商 で算定され、何ヶ月分の売上高に対応する在庫があるかと示します。
この在庫回転期間は、業種によっての違いはありますが、一般的には、0.5ヶ月(製造業)~1ヶ月(小売全般)以内が理想的です。2.ヶ月以上の場合は、過剰在庫・滞留在庫が存在している可能性が高いといえます(この項の最後に、業種ごとの平均値を記載しましたのでご参考にしてください)。
もし、在庫回転期間が2ヶ月以上である場合には、さらに、細かく分析をしてみます。主要な商品ごとに、同じように在庫回転期間を算定してみて、どの主要商品の在庫回転期間が長いのかを把握します。
明らかに在庫回転期間が長い商品については、その理由も分析します。近々、売れ筋商品になりそうなので、それに備えて一時的に多めの在庫を抱えているのか、それとも単に売れ残ってしまっているのかなど、原因を把握します。場合によっては、倉庫を見にいってみることも重要です。
単に売れ残っている場合には、少しでもお金を回収できるように売価の変更(値引きやセール)を検討します。売価を下げても売れない場合には、廃棄処分も検討します。売れないからといって、そのまま残しておくことは、自己資本比率の算定上も、在庫管理上もよくありません。
なお、過剰在庫・滞留在庫の処分と並行して、過剰在庫・滞留在庫を発生させないような適正な発注量・発注方法を、試行錯誤しながら検討していくことも重要です。いずれにしても、在庫の削減・管理は、売掛金の回収などの相手があるものとは違い、社長の決意があればできるものなので、地道に執念をもって実行していくことが大切です。
【参考】棚卸資産回転期間 (業種別平均値)