「助成金」というものについて、一度はお聞きになったことがある方も多いのではないでしょうか。また、中には、実際に申請して、受け取ったことがある方もいるかもしれません。
ここでは、聞いたことはあるけど、実際に使ったことはない、又は初めて聞いたという方を対象に助成金の基本をご説明いたします。助成金は、返済不要の資金をもらえるものなので、うまく条件にあてはまれば、資金繰り上、とても助かる制度です。条件にあてはまりそうなものはないか、是非、確認してみてください。
【助成金とは】
「助成金」とは、一般的には、厚生労働省管轄の雇用関係助成金のことを言い、基本的に全て雇用確保が最終目的であるものです(これに対して、「補助金」というものもあり、こちらは、経済産業省管轄のものをさすことが多いようです)。ここでは、ある一定の条件を満たせば、だいたいの場合にもらえる資金である「助成金」を取り上げます(「補助金」は、国等の政策推進のために補助を出すものですので、条件・審査のハードルが高いものです)。
【大前提】
上記でも述べたように、基本的には雇用関係の助成金であるため、それを申請する大前提として、自社が「雇用保険の適用事業所の事業主」であることが必須となりますのでご注意ください(なお、「雇用保険の適用事業所の事業主」であっても、①過去2年間、労働保険料の滞納がある、②会社都合で従業員を解雇したことがある、などの場合には、助成金を受給できないので注意が必要です。これら前提条件の詳細については社会保険労務士等の専門家にご確認ください)。
【助成金の具体例】(平成25年10月時点で申請が可能な助成金)
以下では、広く一般の企業が利用でき、手続きが比較的簡単で受給しやすく、かつ金額も比較的大きい助成金に絞りご紹介していきます、なお、実際の申請には、助成金に詳しく、経験豊富な社会保険労務士等の専門家に相談しながら進めていくことをお勧めします(助成金は期間限定のものもあり、最新情報の取得が大切です)。
- キャリアアップ助成金(正規雇用等転換コース)
- 概要:
有期契約労働者等の正規雇用等への転換又は派遣労働者の直接雇用化を行った事業主に対して助成。
- 助成金額:
有期契約労働者を正規雇用した場合には、1人あたり40万円(中小企業の場合)(有期契約⇒無期雇用、無期雇用⇒正規雇用の場合は1人あたり20万(中小企業の場合))
- ポイント:
- 過去3年以内に当事務所内で正規労働者として雇用されたことがないこと
- 6ヶ月以上、当事務所内で非正規労働者として雇用(派遣)されていること
- 有期→無期への転換については、転換後の給与を5%以上増額していること
- 正規雇用労働者として転換されることを前提として雇用された労働者ではないこと
- 転換制度等が定められている「就業規則」を管轄労基署に届け出ていること
- 母子家庭、父子家庭に当たる場合は、助成金額に加算あり など
- キャリアアップ助成金(短時間正社員コース)
- 概要:
短時間正社員への転換や新たな雇い入れを行った事業主に対して助成。
- 助成金額:
1人あたり20万円(中小企業の場合)
- ポイント:
- 基本給、賞与などの算定方法が正規雇用労働者と同等であること
- 転換制度を利用する場合は、その利用理由が育児・介護以外であること
- 転換制度の利用期間経過後、原則として現職または現職相当職へ復帰させること
- 在宅勤務として利用しているものではないこと
- 転換制度等が定められている「就業規則」を管轄労基署に届け出ていること
- 母子家庭、父子家庭に当たる場合は、助成金額に加算あり など
- キャリアアップ助成金(短時間労働者の週所定労働時間延長コース)
- 概要:
短時間労働者の週所定労働時間の延長を行った事業主に対して助成(30時間以上に延長し、社会保険を適用)。
- 助成金額:
1人あたり10万円(中小企業の場合)
- ポイント:
- 週所定労働時間25時間未満の非正規労働者として6ヶ月以上雇用されていること
- 上記の期間については社会保険に加入する要件を満たさず、被保険者ではなかったこと
- 社会保険適用事業所にあっては、転換後、当該労働者を社会保険に加入させること など
- 両立支援助成金(子育て期短時間勤務支援助成金)
- 概要:
就業規則等により子育て期の労働者が利用できる短時間勤務制度を設け、労働者に利用させた事業主に対して助成。
- 助成金額:
1人目は40万円、2人~5人目は15万円(中小企業の場合)
- ポイント:
- 「一般事業主行動計画」を策定し、管轄の労働局長に届出および公表し、労働者に周知していること
- 少なくとも小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が利用できる制度であること
- 1日の所定労働時間が7時間以上の者について、1日の所定労働時間を1時間以上短縮するものであること
- 制度が規定された日以降に当該制度の利用を開始した者であること
- 制度の利用開始日までに雇用保険被保険者として1年以上継続して申請事業主に雇用されている者であること
- 制度を連続6ヶ月以上利用し、引き続き雇用保険被保険者として雇用されていること
- 制度の利用開始後の時間当たりの基本給等の賃金が、制度の利用前と比較して同等以上であること など
- 両立支援助成金(子育て期短時間勤務支援助成金)
- 概要:
就業規則等により子育て期の労働者が利用できる短時間勤務制度を設け、労働者に利用させた事業主に対して助成。
- 助成金額:
1人目は40万円、2人~5人目は15万円(中小企業の場合)
- ポイント:
- 「一般事業主行動計画」を策定し、管轄の労働局長に届出および公表し、労働者に周知していること
- 少なくとも小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が利用できる制度であること
- 1日の所定労働時間が7時間以上の者について、1日の所定労働時間を1時間以上短縮するものであること
- 制度が規定された日以降に当該制度の利用を開始した者であること
- 制度の利用開始日までに雇用保険被保険者として1年以上継続して申請事業主に雇用されている者であること
- 制度を連続6ヶ月以上利用し、引き続き雇用保険被保険者として雇用されていること
- 制度の利用開始後の時間当たりの基本給等の賃金が、制度の利用前と比較して同等以上であること など
- 雇用調整助成金
- 概要:
景気の変動、産業構造に変化などの経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた場合(※1)に、休業、教育訓練、または出向(※2)によって、その雇用する労働者の雇用に維持を図る事業主に対して助成。
(※1:売上高などの最近3ヶ月間の月平均値が前年同期に比べ10%以上減少していること等
※2:3ヶ月以上1年以内の出向に限る)
- 助成金額:
休業・教育訓練の場合⇒休業手当等の2分の1(中小企業は3分の2)
出向の場合⇒出向元事業主の負担額の2分の1(中小企業は3分の2)
- ポイント(休業):
- 労使間の協定により行われていること
- 所定労働日の所定労働時間内において実施されているものであること
- 休業手当の支払いが労基法第26条に違反していないものであること など
- ポイント(教育訓練・出向):
ポイントとなる留意事項が多いため、専門家にご相談の上、ご検討ください。
- 中小企業労働環境向上助成金
- 概要:
雇用管理制度の導入等を行う健康・環境・農林漁業分野等の事業を営む中小企業事業主に対して助成
- 助成金額:
評価・処遇制度 40万円
研修体系制度 30万円
- ポイント:
- 健康・環境、農林漁業の分野等の事業(重点分野関連事業)を営む中小企業であること
- 評価・処遇制度の導入においては、以下のいずれかの制度を導入し、就業規則等に定めていること
①評価・処遇制度、②昇進・昇格基準、③賃金体系制度、④諸手当制度
- 研修体系制度の導入においては、カリキュラム内容、時間(Off-JT 10時間以上)等を定めた職業訓練・研修制度を導入し、就業規則等に定めること など