格付けは、融資先の決算書数値をベースに算定される(定量評価)部分がほとんどなのですが、一部、定性的な部分(数値以外の部分)も加味されることがあります。良い定性評価(技術力があるなど)はあまり加味されることがないのが実状ですが、悪い定性評価は格付けに反映されやすいと言えます。その代表的なものが、見た目の良くない決算書です。ここでは、どういった決算書だとマイナス評価になるのかをお話しいたします。

  1. 貸付金・仮払金・立替金といった科目の金額が多額である場合。

    一般的に、中小企業で貸付金がある場合には、それは、社長個人への貸付けか、関連会社への貸付金が多いかと思います。こうした場合、おそらくそのほとんどが回収困難となっていることが想定されるので、銀行ではこの役員貸付金、関連会社への貸付金の金額が多いことをとても嫌います。

    同様に、仮払金・立替金も、社長個人や関連会社に関係する場合が多く、その使途が不明であったり、不良債権化しているものも多いであろうことから銀行に嫌われる科目の代表です。

  2. 「投資その他の資産」の中で、優良な上場有価証券もしくは敷金・保証金といったもの以外の科目の金額が多い場合<

    優良上場企業の株式や敷金・保証金以外の科目には雑多なものが多くあり、こうした科目(例えば、関連会社株式、出資金、ゴルフ会員権、長期貸付金など)に計上されている金額は、実際の価値を表していないことが多いためです。

    こうしたことから、これらの科目の金額が大きい場合に、銀行はあまり良い印象を持ちません。

  3. 売掛金・受取手形・棚卸資産の金額が、売上規模の割には多くて、また、その金額が前年度より増えている場合。

    事業をしていく上で、売掛金・受取手形・棚卸資産といった運転資本は必ず必要ですが、それが、その会社の売上規模に比較して多い場合、そしてその金額が前年度より増えているような場合は、銀行は慎重になります。なぜなら、回収が困難になっている売掛金や受取手形、また、滞留している棚卸資産(在庫)がある可能性が高いからです。

    以上のような科目が決算書にあり、またその金額も大きい場合には、銀行員の第一印象はとてもよくないものとなり、格付けでの定性評価上、マイナスポイントになる可能性があります。

    こうした科目の金額が大きいということは、会社のお金がこうした科目に滞っていることを意味しており、格付け向上のためだけでなく、資金繰りの観点からも、会社経営の効率性の観点からも良くありません。 いきなりの改善は難しいかもしれませんが、少しづづでもこうした科目の整理・縮小を進めていくことをお勧めいたします(これらについても、顧問税理士さんとご相談の上、実行を検討していきます)